ADSL通信技術解説

爆発的に広がった日本のインターネットサービスを牽引した一つの技術要素としてADSLがあります。日本では当初ISDNとの混信を懸念したNTTがADSL導入に反対していましたが、1999年にADSLを使った商用サービスが始まり、翌年にはNTTも参入してADSLサービス競争が始まりました。

ADSLはアナログ電話線でデータ通信

ADSLインターネット模式図
ADSLインターネット模式図

ADSLとは三つの言葉の頭文字から作られた用語です。

 A  - Asymmetric (非対称)
 D  - Digital    (デジタル)
 SL - Subscriber Line (加入者回線)

この言葉がADSLの特徴を端的に表しています。
まず「非対称」とは通信速度が上りと下りに差があることを示しています。一般的な通信では上りと下りの通信速度は同じです。なぜADSLでは非対称にしたのか、それは家庭でインターネットアクセスすることを前提に考えられた仕様だからです。一般ユーザーのインターネット利用の大半はWEB閲覧で家庭から大量にデータ送信することが少ないことから上りに比べて下りの電送速度を速くした非対称通信としたのです。
次の特徴としてADSLは「デジタル」信号で通信が行われます。しかし、元々アナログ音声通信用に作られた電話線(加入者線)をデータ通信に利用するためデータ信号を変調し、効率よくデジタル信号として送れるように工夫されています。
最後の「加入者回線」とは、ADSLには電話回線「メタル・ケーブル」を利用することを示しています。光ファイバーでもなく、同軸ケーブルでもない既に施設されている電話線を利用できることがADSLの最大の特徴です。

ADSLの特徴

電話とデータ通信が同時に使用可能
既存の電話ケーブル(メタル・ケーブル)を利用するADSL仕様は、電話とADSLデータ通信を同時に利用可能です。互いに干渉しないように、電話で利用する周波数とデータ通信で利用する周波数を分離しています。
上りと下りでスピードに差がある
ADSLは、上りよりも下りの通信スピードが速い非対称の通信規格です。元々アナログ信号を通すために作られた加入者線ですので、利用できる周波数帯域は限られています。限られた帯域を効率よく利用するために非対称通信が考えられました。
高速化にも限界
ADSLは2000年のサービス開始当時は下り最大速度1.5Mbps,8Mbpsでスタートし、2002年に12Mbpsサービスが始まり、2003年には20Mbpsを越える規格が登場しました。さらに現在では下り最大40MbpsのADSLサービスも提供されています。しかし、メタルケーブルで利用できる帯域も限界に達し、これ以上の高速化は困難な状態です。

電話のアナログ線(メタルケーブル)を利用した通信規格はxDSLと言われ、ADSLはその中の一種です。xDSLにはADSL以外にCDSL (Consumer DSL)、VDSL (Very high-bit-rate DSL)、長距離向きのReach DSLなどがあります。

電話では使わない電送帯域を使用

ADSLが利用する周波数帯域
ADSLが利用する周波数帯域

ADSLはアナログ電話線(加入者線)を利用するのに、電話中でもデータ通信が利用出来ます。それは、上図「ADSLが利用する周波数帯域」で示すように、アナログ音声で利用する周波数(0~4KHz)を避け、データ通信用には26KHzから上の周波数帯域を利用しているからです。

ADSLの通信の仕組みは意外と単純で、基本通信モジュールの組み合わせで実現しています。利用できる通信帯域を4KHz単位に分割し、一つの周波数帯域を「ビン」と呼びビン単位で通信するデータ量が決まり、ビンの組み合わせで最大通信速度が決まります。
たとえば、下り最大通信速度8メガ、12メガのADSLでは、下りのビン数は最大223本、上りのビン数は最大25本となります。
ビン数の違いで下りの最大通信速度が圧倒的に速くなるのです。

通信速度計算例(12メガADSL)
転送ビット 15ビット/1ビン
変換回数  4000回/秒
下りビン数 223本

 15bit/ビン×4000回/秒×223ビン=13.38Mbit/秒

よって、下り通信速度約12Mbpsとなります。

ADSL高速化の秘密

中間フレーム詰め込み
中間フレームにデータを詰め込む

ADSLは1.5M、8Mbpsから12Mbps、20Mbpsに高速化を実現した後、さらに最大通信速度40Mbpsを越える規格も登場しました。これらADSLの高速化技術を支える基本技術を探ります。

ビン数(モデム)を増やす
通信速度を上げるのに単純な方法が使われています。一つの方法は通信の基本単位であるビン数を増やすのです。8Mbps,12Mbpsでは最大1.1MHzまでだった周波数帯域を20MbpsのADSLでは最大2.2MHzまで帯域を拡大しました。さらに最大40Mbps越のADSLでは最高3.75MHzまで利用し、ビン数を増やしています。
ビンの増加に合わせて中間フレームのデータを増やす
一つのビンに詰め込むデータ量を増やすことでも、ADSL通信速度の高速化を図っています。ビン数をいくら増やしても、元になる通信データが供給されないと宝の持ち腐れになります。そこで、ビン数の増加に合わせて効率的にデータを詰め込むS=1/2,1/4,1/8,1/16技術が使用されています。

ADSLの基本通信単位であるビンは一つ一つが独立したアナログモデムにたとえられます。一つのビンで15ビットのデータを1秒間に4000回転送する能力があります。

電話局からの距離が問題

ADSL距離別電送速度(理論値)
距離によるADSL電送速度(理論値)

ADSLの高速化が進み、現在では最高40メガを越えるADSLサービスを提供しているプロバイダもあります。しかし、このような高速通信を利用できるのは電話局から近いごく一部のユーザーに限られます。
上図「距離によるADSL電送速度(理論値)」に示したように電話局から1Kmも離れると最大速度の半分に落ちる場合もあります。しかも上図に示した距離は電話局からの直線距離ではなく、電話局内で束ねられたケーブルも含めたケーブル長のことです。

電話ケーブルが長くなると急激に電送スピードが落ちるのは、銅線の物理的な特性に起因しています。一般に周波数の高い信号は線路が長いほど減衰が多くなり、信号が小さくなってしまいます。
ADSL高速化の秘密」で紹介した20Mbpsや40MbpsのADSL仕様はダブルスペクトラムやクアッドスペクトラムと言われる1.1MHz以上の高周波帯域を利用した通信技術です。そのため、電話ケーブルの距離が長くなると急激に信号レベルが低くなり、通信速度が落ちてしまうことになります。

電話局からの距離は事前にチェックできる

NTT 電話回線の線路情報
NTT東西 電話回線の線路情報公開

ADSLプロバイダに契約するときに一番心配なのは、電話局からの距離により契約した最大電送速度の数分の1の電送スピードしか出ないことがあることです。
ユーザーのそんな声に答えてNTT東西が始めた便利なサービスがあります。それは、自宅の電話番号を入力すると、最寄りのNTT収容局から自宅までの線路長伝送損失が調べられるサービス「電話回線の線路情報」です。

このサービス「電話回線の線路情報」の優れた部分は、電話局からの直線距離ではなく、実際の電話線長さを示し、かなり正確であるところです。また具体的な伝送損失が示されるのも評価できます。

★電話回線の線路情報リンク先

NTT東日本
http://www.ntt-east.co.jp/line-info/

NTT西日本
http://www.ntt-west.co.jp/open/senro/senro_user_index.html

フレッツADSLの電送速度と伝送損失の関係
フレッツADSLの電送速度と伝送損失の関係

ADSLプロバイダに契約する前に開通後の電送速度を見積もれる便利なサービスはまだあります。NTT東西が提供しているフレッツADSLは、伝送損失とフレッツADSLの電送速度の目安を発表しています(上図参照)。
利用法としては、上で紹介した「電話回線の線路情報」で最寄りの電話局から自宅までの伝送損失を確認し、上図「フレッツADSLの電送速度と伝送損失の関係」で何Mbpsが期待できるのかチェックします。
この情報もあくまで予想でしかありませんが、全く手探りの状態よりはかなり進歩していると言えます。

★フレッツADSLの電送速度と伝送損失の関係リンク先

NTT東日本
http://flets.com/misc/adspeed.html

NTT西日本
http://www.ntt-west.co.jp/flets/adsl/plan_sentaku/sankou_jouhou/

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